つまらない者ですが。

31歳・バツイチ・メンヘラ乙女の日常、ときどき妄想。

夢だけど、夢じゃなかった。

今年の2月に、じいちゃんが亡くなった。

 

89歳の大往生で、昔からやりたい放題の暴れん坊将軍だったようで、ばあちゃんやお父さんを始め周りの人たちはマジで大変だったらしいけど、私たち孫には優しいを通り越して超激甘。

時々ばあちゃん達が漏らす愚痴や嫌味すらも他人事として聞き流せばただの笑い話で、聞けば聞くほど

(なんだ、ただの最高のジジイじゃねえか。)

と思うだけだった。

 

だけど、そんなじいちゃんの事を、私は特に大事にしていたわけではなかった。

一緒に住んでいる時にはもちろん意識すらしていなかった。

家を出てからは滅多に帰省することなんてなかったし、何年かに1度、敬老の日に気まぐれに何かを贈った事もあったけれど、誕生日を祝ったりした記憶はあんまり無い。

 

誕生日どころか、入院したってお見舞いにも行かなかった。

どうして行かなかったのか。そんなの理由なんてない。なんというか...そうだなぁ...単純に先送りにしていただけ、かな。

いつか退院すると思っていたし、もっと極端な事を言えば、じいちゃんは死なないと思っていた。無意識に。無意識だから、実際はそんな風に思うことすらなかったけど。

 

昔から意識して何かをすることが出来なかった。イベントや何かがあった時だけもっともらしい行動をするなんて恥ずかしくて、とてつもなく後ろめたかった。

だから、連絡をもらって病院へ駆けつけた時ですらじいちゃんに声のひとつも掛けられなかった。涙は溢れて止められなかったけれど、言葉なんか出てくるはずがない。

 

最後まで私、なんにもしてあげなかったな。

 

もう大人なのに、いつまでもこんな自意識にかられて身動きが取れなくなっていたのは、あの場の中ではきっと私だけだったね。

 

 

そんなどうしようもない私のことを、じいちゃんはどう思ってるんだろう。

 

つい2日前、夢で会ったの。じいちゃんに。

 

夢占いなんかでは、亡くなったじいちゃんが出てくるとどういう意味があるんだとか、吉夢だの警告夢だの、なんだか色々あるみたいだけれど、どれにも当てはまらない気がして調べるのは途中でやめた。

 

死んだはずのじいちゃんのお見舞いに行った夢を見た。

夢らしく病院はじいちゃんが入院していたところとはまったく別のところだった。

階段を駆け上がった先には両親と妹がいて、私の慌て様からしてお見舞いというよりは、あの時みたいに連絡をもらって駆けつけた状況だったのかもしれないけど、両親や妹は落ち着いていて呑気に談笑までしていた。

そんな家族と話すより先に、走ってそのまま病室へ飛び込むと、ベッドに横向きに腰掛けているじいちゃんがいた。

暗くて顔はよく見えなかったけれど、あれは確かにじいちゃんだった。

 

「じいちゃん今ごはん食べてるからこっちに来なさい。」

 

と、母に声を掛けられて外に出た...ところくらいまでしか憶えていないけれど、目が覚めてからずっと考えている。じいちゃんの事を。

 

 

不思議な夢だったなあ。

 

だって、夢の中でじいちゃんが食べていたのは病院食じゃなくって、皮付きの丸ままのりんごとバナナだったんだよ。

 

(あ、御供え...)

 

思い出すとまた笑ってしまう。

 

仏壇に御供えしているであろうりんごとバナナを、じいちゃんがちゃんと食べていたからなんだか可笑しくて。

 

(仏様って本当に食べるんだ...!)

 

そんなの見ちゃったらさ、まぁ見たって言っても夢なんだけど、嬉しくて、ワクワクして、あれからずっと落ち着かないんだ。変だな。

 

じいちゃん、どうして私のところに出てきたんだろう。何か言いたいことでもあったのかな。それとも別に理由なんてないのかな。

よくわかんないや。うん、よくわかんない。

 

よくわかんないけど、じいちゃん。

今度さ、黒棒買って帰るよ。

好きでしょ、黒棒。一緒に食べよ。